日本離婚・再婚家族と子ども研究学会 第8回大会 開催のご挨拶

 この度、2025年9月27日(土)・28日(日)の二日間にわたり、東京都豊島区西巣鴨に所在する大正大学を会場として、日本離婚・再婚家族と子ども研究学会 第8回大会を開催する運びとなりました。大会実行委員長として、謹んでご挨拶申し上げます。

 振り返りますと,本学会設立の前年に開催された「離婚・再婚家族と子ども研究会」の学術研究集会――いわば本学会の第0回大会――の会場が,大正大学でした。その後,会員数も増え,順調に発展を遂げてきた日本離婚・再婚家族と子ども研究学会の大会を,再び大正大学で開催できますことを大変うれしく思っております。

 さて,本大会のテーマは「ステップファミリーと日本社会の家族観」です。ステップファミリーは、もはや特別な家族形態ではありません。しかしながら、その多様な実態や、ステップファミリーが直面する固有の課題、そしてそれを支える社会的支援のあり方については、いまだ十分に認知され、議論が深まっているとは言い難い状況です。また、ステップファミリーという存在は、私たちが無意識のうちに前提としている「家族とはこうあるべき」という家族観そのものを問い直す契機にもなり得ます。

 そこで,大会の初日には,ステップファミリー研究の世界的権威であるローレンス・ギャノン(Lawrence Ganong)先生に,「ステップファミリーがうまくいくためには ー家族に関わる専門職への提言ー」と題した一般公開の基調講演を行っていただきます。ギャノン先生は,長年の研究の集大成ともいえる新著『What Works in Stepfamilies: Creating and Maintaining Satisfying and Effective Relationships』を最近出版されました。この基調講演は,豊富な研究成果に基づいた貴重な知見に触れる、またとない機会となることでしょう。

 基調講演に続いて行われる大会シンポジウム「ステップファミリーと日本社会の家族観」には,直原康光氏(大阪大学),菊地真理氏(大阪産業大学),ローツ・マイア氏(東北大学)をシンポジストに,緒倉珠巳氏(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン)をコメンテーターにお迎えし,野沢慎司氏(明治学院大学)と原田綾子氏(名古屋大学)にオーガナイザー兼司会進行をご担当いただく予定です。本シンポジウムでは,ステップファミリーの現状と課題、支援のあり方について,最新の研究成果や学術的知見を共有するとともに、ステップファミリーを通して現代日本社会の家族観の変容や多様性について、学際的な視点から深く考察する機会としたいと考えております。

 このほかにも、会員の皆様による研究発表やラウンドテーブルなどによって,参加者同士が活発に知見を交換し、相互に学びを深められる場を提供できるよう,準備を進めております。

 ところで,大正大学の構内には、聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ:観音さま)を安置した「すがも鴨台観音堂(鴨台さざえ堂)」がございます。すがも鴨台観音堂は,回廊の往路と復路が交わらない八角・三匝(さんそう)の珍しい階堂で,二重らせん構造になっており,巻貝のさざえに似ていることから,「さざえ堂」の愛称で呼ばれています。観音さまは,あらゆる人々の苦しみを取り除き,願いを叶える現世利益の菩薩として広く信仰を集めていますが,「さざえ堂」を拝観すると,思いがけないご利益に恵まれると大変評判です。

 参拝の回廊には,フランス人の調香師クリストフ・ロダミエル氏が調香した,えもいわれぬ素晴らしいお香が焚かれています。その香りに包まれるだけで,普段忘れがちな繊細な感性が呼び覚まされますので,私は折に触れて拝観しています。また,観音さまの背景には,日本画の大家である千住博画伯が描いた「滝」の壁画が掛けられており,眺めているだけで瞑想的な意識状態にいざなわれます。どなたでも拝観いただけますので,大会にご参加の際は,ぜひ足を運んでみてください。

 実りの秋、参加者の皆様が研究交流や情報交換を通じて互いに刺激し合い,実り多い時間をお過ごしいただけるよう、実行委員一同、鋭意準備を進めております。第8回大会にて,多くの皆様とお目にかかれることを,心より楽しみにしております。

2025年4月吉日

日本離婚・再婚家族と子ども研究学会 第8回大会

大会実行委員長

青木 聡(大正大学)

さざえ堂